儲かっても損しても税金面では不利?仮想通貨(ビットコイン等)の税務2

石塚

前回は仮想通貨が「雑所得」になるというお話をしました。

株取引は雑所得ではなく「譲渡所得」。仮想通貨の取引とは取扱いが異なるのです。

「じゃあ雑所得になると何が問題なんだ?」ということについて、元国税局調査官の税理士 石塚が意識高めにお話します!

仮想通貨の利益=雑所得による、投資家の苦悩とは?

①譲渡所得に比べて税率が高い
所得税の計算では、所得の増加に伴って徐々に税率が上がる、累進課税制度をとっています。
雑所得もこの累進課税制度をとっているため、最高税率は45%となり、住民税の10%を含めると合計で最大55%の税金が課されることとなります。
一方、株式の売買によって得られた利益は譲渡所得に該当し、税率は住民税を含めても合計で一律約20%となります。
仮想通貨による投資利益は、株式による投資利益に比べて最大で約25%もの税率差が生じることとなります。

②損益通算ができない
所得税は本来所得(利益)に対して課税されるものですので、仮想通貨とサヨナラした際に損失が出た場合には当然税金はかかりません。
しかし、事業所得や不動産所得では他の所得と相殺(損益通算)することができますが、仮想通貨は雑所得なので損益通算はできません。
例えば、サラリーマンの方に不動産所得があった場合、不動産所得で100万円赤字になったら、給与所得から100万円を引いて税金を計算する(=損益通算する)ことができます。(例外はあります)
しかし、仮想通貨の売買で100万円の損失を出しても税制上の救済はなし、つまり給与所得はそのまま税額が計算されるという扱いになります。
個人によって異なりますが、大ざっぱに言うと年収600万円のサラリーマンの場合、不動産所得で100万円の赤字だと20万円ほど税金が安くなるのに、仮想通貨で100万円損しても税額はそのまま、ということになります。
例えば、事業所得の場合は青色申告をしていれば3年間は損失を繰り越すことができますし、同じ年で得た所得があれば、損益通算も可能です。

②損失の繰越しができない
事業所得や不動産所得と異なるところはまだあります。
それは事業所得や不動産所得では(青色申告ならば)損失を翌年以降(最大3年間)に繰り越すことができるのに対し、仮想通貨の取引では損失を繰り越すことができない、ということです。
去年は大損して所得はマイナスだったけれど、今年は儲かった!という場合などに問題になりますね。
事業所得や不動産所得では「去年は損失があったから、今年の所得からその分引いて税額を計算しましょう」となるのに対し、仮想通貨取引の場合は「今年は儲かったんですか。よかったですね。儲かった分税金を払いましょう。」で終わるということです。
上場株式の取引では、その年の譲渡益から控除しきれない譲渡損を最大3年間繰越すことができます
株取引と仮想通貨取引の税制の大きな違いの一つですね。

仮想通貨の税金は恐ろしい?

2017年に仮想通貨の価格が急上昇する仮想通貨バブルが起き、仮想通貨によって一財を築いた「億り人」と呼ばれる人たちが誕生しました。
しかしながら、同年12月に発表された国税庁からの通達により、「仮想通貨による利益が雑所得扱いになること」と「他の仮想通貨との交換による含み益についても課税されること」が明らかとなりました。
更にその翌年の仮想通貨価格の下落により、法定通貨への交換の機会を逃した億り人が納税資金を確保できずに、『納税難民』になる。という悲惨な状況が数多く散見されました。

石塚

2017年は仮想通貨元年と言われ、仮想通貨という名前が浸透した年でしたが、翌年の2018年は税金の恐ろしさを世間の方が再認識した瞬間でもありました。

仮想通貨を扱う方は税金ありきでの運用を

上記のことでも分かるように、仮想通貨は値動きが大きいことに加えて、課税機会が多いという投資家にとっては非常に不利な税制となっております。
価格差による投機(入口)のみではなく、課税(出口)も見据えた運用が大切であり、仮想通貨への投資は「仮想通貨の知識」と「税制度の知識」の両輪を備えた上で、運用すべきものか思います。


石塚

ここまで読んで頂きありがとうございました。
仮想通貨の税制は事業所得や株取引と比べて厳しいものになっています。

ビットコイン等の値動きは度々ニュースになりますが、課税関係については忘れられがちかもしれません。仮想通貨の税金にお悩みの方は是非ライストンへご相談ください!

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