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2025.10.11 2025.10.11
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会社役員でも雇用保険に入れる?条件と注意点を税理士・社労士が解説

会社役員でも雇用保険に入れる?条件と注意点を税理士・社労士が解説

「会社役員は雇用保険に入れない」という声を耳にする方も多いのではないでしょうか。

確かに、取締役や代表取締役などの役員は「会社を経営する立場」にあります。しかし実際には、役員であっても労働者としての実態がある場合、雇用保険に加入できるケースもあります。

本記事では、会社役員と雇用保険の関係、加入が認められる条件や手続きの流れ、そして加入できない場合の代替制度について、税理士・社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。

会社役員と雇用保険の基本ルール

雇用保険は、「労働者を保護する制度」です。そのため、会社役員(取締役・代表取締役・監査役など)は、原則として「使用者」の立場に立つとされ、被保険者にはなりません。

ただし、ここで重要なのは、役員という肩書きだけで判断されるわけではない点です。実際に従業員のように働いているかどうか、つまり労働実態が判断材料になります。

例えば、役員でありながら現場業務や事務処理に日常的に従事し、勤務時間・給与体系・指揮命令系統が社員と同様であれば、労働者性が認められる可能性があるでしょう。

このように、経営者としての役割と従業員としての労務提供を兼ねる立場を「使用人兼務役員」と呼びます。一定の条件を満たせば、役員でも雇用保険に加入できることがあるのです。

会社役員でも雇用保険に入れるケース

それでは実際に、どのような条件を満たせば会社役員でも雇用保険に加入できるのかを詳しく見ていきましょう。

以下の条件をすべて満たす場合には、役員であっても被保険者資格が認められる可能性があります。

  • 代表権のない役員(使用人兼務役員)
  • 役員報酬が社員の給与より少ない
  • 雇用契約を締結している

判断は慎重を要するため、税理士や社会保険労務士など専門家に確認しながら進めるのが安心です。

代表権のない役員(使用人兼務役員)

代表権を持たず、会社の意思決定に直接関わらない役員であれば、勤務実態に応じて雇用保険の対象となることがあります。

例えば、取締役であっても、部門管理や現場責任を担い、勤務時間・業務内容・勤務地が社員と同様であるならば、労働者性が認められる可能性が高まります。

ただし、肩書き上は取締役であっても、実質的に経営判断に関与していたり、代表権を持つ立場であったりすると、「経営者」として扱われ、加入できないことが一般的です。

重要なのは、役職名ではなく実際の業務内容と労務提供の実態で判断される点です。

役員報酬が社員の給与より少ない

役員報酬が社員としての給与よりも低く、実質的に「使用される立場」であると評価される場合には、加入が認められることがあります。

報酬額は、一つの目安として「経営者性」か「労働者性」かを判断する材料になります。逆に、報酬が高額かつ経営判断にも関与しているような場合は、やはり「経営者性」が強く見なされ、加入不可となることが多いです。

したがって、役員報酬と給与の関係を整理しておくことが、申請時に重要になります。

雇用契約を締結している

役員であっても、明確な雇用契約を結び、就業規則や給与規定に基づいて勤務している場合には、加入対象となる場合があります。

この際ポイントとなるのは、契約書があればよいというだけではなく、指揮命令を受けて働き、勤務時間が管理されているかどうかという実態が伴っているかです。

例えば、上司の指示をもとに勤務し、労働時間・勤務日数が明確に記録されていれば、雇用関係が実質的に成立していると見なされる可能性が高まります。

ただし、名目上は契約書があっても、実際には経営判断をしていたり勤務実態が曖昧だったりする場合は認められないこともあります。形式だけでなく、日々の勤務実態を示す証拠(勤怠記録・給与明細など)を整備しておくことが不可欠です。

役員が雇用保険に加入するための手続き

雇用保険への加入が認められるかどうかは、最終的にハローワークが実態をもとに判断します。スムーズに進めるためにも、以下の流れを確認しておきましょう。

1. 加入条件の確認

まずは、役員が「労働者性」を持つかどうかを整理することが第一歩です。具体的には以下の点をチェックします。

  • 代表権がないか
  • 実際に従業員として労務提供しているか
  • 役員報酬よりも給与所得の方が多いか
  • 労働時間・業務内容が明確に管理されているか

これらの条件を満たしている場合、被保険者資格の申請が可能です。ただし、判断にはグレーゾーンも多く、社労士に確認してもらうのが確実です。

2.必要書類をハローワークへ提出・申請

実態を証明するために、以下のような書類を準備・提出します。

✔︎ 兼務役員雇用実態証明書
✔︎ 定款
✔︎ 就任日が確認できる書類(就任時の議事録または登記事項証明書の写し)
✔︎ 人事組織図
✔︎ 役員報酬規程など報酬額が確認できる資料
✔︎ 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿
✔︎ 就業規則・賃金規定(または雇用契約書・労働条件通知書)
✔︎ 雇用保険被保険者資格取得届
参考:「兼務役員雇用実態証明書」提出時必要書類|厚生労働省

これらの書類をもとに、ハローワークが労働者性の有無を審査し、加入の可否を判断します。なお、地域によって提出様式が異なる場合があるため、事前に確認しておくといいでしょう。

3. 認定後の流れ

認定されれば、他の従業員と同様に会社・本人双方で雇用保険料を負担します。また、万一失業した場合、一定の条件を満たせば失業給付の受給資格を得られる可能性があります。

ただし、形式的に加入だけして実態が伴わない場合には、給付金返還を求められる等のリスクがあるため、実態に即した適正な申請であることが不可欠です。

雇用保険に入れない会社役員はどうすればいい?

多くの役員は「使用者」の立場であるため雇用保険には加入できません。しかし、社会的リスクに備える方法はいくつかあります。

まず候補となるのが、労災保険(特別加入制度)※1 です。通常、経営者や役員は労災保険の対象外ですが、「中小事業主等特別加入制度」を利用すると、現場業務に携わる役員も労災補償を受けることができます。

さらに、失業などのリスクに備えたい場合は、小規模企業共済 ※2 を活用することも有効です。これは、経営者や役員などが加入できる共済制度で、廃業や退任時に共済金を受け取ることができます。掛金は全額所得控除の対象となるため、節税と将来の備えを両立できるのが特徴です。

また、企業型確定拠出年金やiDeCoを併用することで、退職後や老後の準備を計画的に進めることができます。

どの制度が最適かは、会社の規模や報酬体系、事業形態などによって異なります。税務と労務の両面から総合的に判断できる専門家に相談し、自社に最も適した仕組みを整えていきましょう。

※1 参考:労災保険への特別加入|厚生労働省
※2 参考:小規模企業共済とは|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

> 【関連記事】一人会社で退職金は支給できる?

まとめ

会社役員は原則として雇用保険の対象外ですが、勤務実態が「労働者としての性質」を備えている場合には、加入が認められる可能性があります。

その判断基準は、代表権の有無・業務内容・役員報酬と給与の関係・契約の有無など、実際の労務提供の実態に基づきます。ただし、形式だけを整えても認定されないケースもあり、自己判断で申請することは危険です。

また、手続きにはハローワークへの書類提出が不可欠ですが、その際には勤務実態を裏付ける証拠を整えておかなければなりません。

もし「うちの会社ならどうか」「手続きを丸ごと手伝ってほしい」というご希望がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。当事務所では税理士と社労士の連携による一貫サポートが可能です。

EDITOR

監修者

石塚 友紀

石塚 友紀 / 代表税理士

ライストン税理士事務所 代表税理士の石塚友紀と申します。
当税理士事務所では、記帳代行や申告書作成をするだけではなく、お客様にあった節税プランを積極的に模索、ご提案しています。
お客様の不安やお悩みを解消し、顧問税理士として一つひとつのご依頼に正面から向き合い全力でご支援させていただきます。
税務のことでお悩みの方、顧問税理士をお探しの方は是非一度、ライストン税理士事務所へご相談ください。

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