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会社解散に関するコラム

2025.09.13 2025.09.23
会社解散サポート

一人会社の解散時に退職金は支給できる?メリット・注意点・節税戦略について

一人会社の解散時に退職金は支給できる?メリット・注意点・節税戦略について

会社を解散するとき、「社長が自分に退職金を支給できるのか?」と疑問を持つ方は多いでしょう。

実は、一人会社であっても役員退職慰労金(退職金)は支給可能です。適切な手続きを踏むことで、法人税・所得税の両面で大きな節税効果を得られる一方、注意しなければならない点もあります。

この記事では、一人会社の解散時に退職金を支給する方法やメリット、さらに節税戦略について解説します。

一人会社でも退職金は支給できるのか?

社長1人だけの会社でも、退職金の支給は可能です。

また、たとえ「株主=社長1人」という状況であっても、株主総会決議を行い、議事録を作成することが必要になります。実質的には自分自身で決議することになりますが、形式上の手続きは欠かせません。

議事録には「退職金を支給すること」「支給額の根拠」などを明記し、退職金額を正式に決定します。これを怠ると、税務署から「支給根拠が不十分」と判断され、損金算入を否認される可能性があります。

退職金以外で資金を受け取る3つの選択肢

一人会社の解散時、退職金以外にも資金を受け取る方法があります。それぞれ課税の仕組みやメリットが異なるため、比較して検討しましょう。

小規模企業共済を活用する場合

小規模企業共済は、社長本人が加入できる「経営者の退職金制度」です。

中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、廃業に伴って共済金を受け取る場合は退職所得扱いとなります。長期加入ほど退職所得控除の恩恵が大きくなるのが特徴です。

廃業や法人解散による共済金の受け取りなら元本割れせずに安心して利用できますが、加入12か月未満での任意解約は掛け捨てとなり、20年未満では元本割れの可能性があります。

参考:共済制度 小規模企業共済とは|中小機構

法人契約保険の解約返戻金を活用する場合

法人で加入している生命保険などを解約すると返戻金が発生し、退職金の原資に活用可能です。返戻率が高ければ解散時の資金確保に有効ですが、返戻金は雑収入として課税対象になります。

そこで退職金として支給すれば損金算入でき、節税効果が期待できます。ただし、契約内容や解約時期によっては元本割れや取り扱いの違いがあるため注意が必要です。

清算時の配当として受け取る場合

会社を解散した後、残った財産を株主に分配する形で資金を受け取る方法です。

一人会社では社長自身が受け取ることになりますが、上場企業からの配当でない場合は総合課税扱いとなり累進課税で所得税、住民税がかかります。退職所得控除や1/2課税の優遇はないため、同じ金額でも税負担が重くなりやすいのが特徴です。

一方、退職金として受け取れば控除や軽減措置が働き、長期在任者ほど有利に手取りを増やせる点が大きな違いです。

関連記事|会社の「解散」と「清算」の違いとは?手続きの流れと注意点をわかりやすく解説

退職金の節税効果と金額・手続きの基本

退職金は、一人会社の解散時に大きな節税効果を発揮します。ただし、金額の決め方や支給のタイミングを誤ると、思わぬ税負担につながることもあるので注意しましょう。

退職金の税務メリット

退職金には、法人と個人の双方で大きな税務上のメリットがあります。

法人側のメリット:退職金を損金算入できるため、法人税の節税につながる
個人側のメリット:退職所得控除と1/2課税により、給与や配当よりも税負担が軽くなる

退職金は一般的に税率が低く、有利な受け取り方法とされています。同じ金額を清算配当で受け取るよりも手取りが増えるケースが多く、とくに在任期間が長いほど退職所得控除が大きくなり、数百万円単位で差が出ることもあるのです。

参考:退職金と税|国税庁

適正な退職金額の決め方

退職金額を決める際は、次のような一般的な計算式を用います。

【最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率】

この「功績倍率」は役員の在任期間や会社への貢献度によって変動し、通常 1.5〜3倍程度が目安とされています。ただし、あまりに高額な退職金は「不相当に高額」と判断され、損金算入を否認されるリスクがあります。

そのため、合理的な根拠を示すことが重要です。報酬水準や同業他社の支給事例を参考にすることで、適正性を説明しやすくなります。判断に迷う場合は、会社解散サポート専門の当事務所へご相談ください。

退職金支給のタイミングと手続き

退職金は、解散決議を行う前後の適切な時期に支給することが望ましいとされています。手続きの流れは以下の通りです。

  1. 株主総会での決議(議事録の作成)
  2. 退職金計算書の作成(支給根拠を明確にする)
  3. 支給証憑の保存(銀行振込明細や領収証など)

これらをしっかり整えておくことで、税務署からの指摘や調査に備えられます。解散と同時に業務が多忙になるため、余裕をもって準備を進めることが成功のポイントです。

まとめ

一人会社であっても、社長自身に退職金を支給することは可能です。形式的な株主総会決議や議事録を整えることで、法人税・所得税の両面で大きな節税効果を得られる点は大きな魅力です。

さらに、小規模企業共済や法人契約保険などを活用すれば、解散後の資金確保をより有利に進められます。一方で、退職金額が不当に高額とみなされると損金否認のリスクがあるため、合理的な算定根拠を準備することが欠かせません。

会社解散は税務・法務の観点から複雑な判断を伴う場面も多いため、専門家のサポートを得ることが安心につながります。安全で効果的な解散と退職金の活用を実現するために、ぜひ当事務所へご相談ください。

EDITOR

監修者

石塚 友紀

石塚 友紀 / 代表税理士

ライストン税理士事務所 代表税理士の石塚友紀と申します。
当税理士事務所では、記帳代行や申告書作成をするだけではなく、お客様にあった節税プランを積極的に模索、ご提案しています。
お客様の不安やお悩みを解消し、顧問税理士として一つひとつのご依頼に正面から向き合い全力でご支援させていただきます。
税務のことでお悩みの方、顧問税理士をお探しの方は是非一度、ライストン税理士事務所へご相談ください。

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