会社をたたむときに必要な手続きと注意点|解散・清算

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会社をたたむことは、経営者にとって大きな決断です。解散や清算といった専門的な手続きが関わるため、正しい流れを理解しておくことが欠かせません。
本記事では、会社をたたむ際に必要となる基本的な手続きの流れや費用、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
なお、会社をたたむというのは単に「閉める」ことではなく、法的に法人格を消滅させるまでの一連のプロセスを指します。事前に準備を整えておけば、余計なトラブルを避け、安心して手続きを進めることができるでしょう。
会社をたたむとは?
「会社をたたむ」とは、会社の営業活動を終了させ、法人格を整理することを指します。一般的には「解散」と「清算」を経て法人を消滅させるケースが多くみられます。
- 解散:営業活動を終了する宣言
- 清算:残った財産や債務を整理し、法人格を完全に消滅させる手続き
これらを経て初めて、会社は正式に消滅したとみなされます。つまり、単に営業をやめただけでは会社は残ってしまい、税務署や社会保険への義務が続くのです。
正式に「解散・清算」を行うことで、初めてすべての責任や義務から解放されることを覚えておきましょう。
会社をたたむ主な理由
会社をたたむ背景にはさまざまな事情があります。代表的なものは次のとおりです。
- 赤字や経営不振による廃業
- 代表者の高齢化や健康上の理由
- 後継者不在による事業承継断念
- 個人事業への転換やM&Aの失敗
いずれも「経営を継続できない」「事業を続けるメリットが薄い」という判断から、会社を整理する選択に至ります。なかには、経営自体は黒字でも後継者不在により存続が難しいケースや、個人事業へ切り替えた方が効率的と判断されるケースもあるでしょう。
背景にある事情を正しく整理することで、適切な方法を選ぶことができます。
会社をたたむ方法
会社をたたむ方法はいくつかあり、状況によって適切な選択肢は異なります。
どの方法を選ぶかで費用や期間、影響の大きさも変わるため、専門家へ相談しながら判断することが安心につながります。
解散(通常清算・特別清算・破産)
最も一般的なのが「解散・清算」によって法人を完全に消滅させる方法です。
- 通常清算:債務超過でない場合に選択される
- 特別清算:経営状況が悪化し、債務整理を要する場合
- 破産:債務超過に陥り、事業継続が困難な場合
通常清算は比較的スムーズに進みますが、特別清算や破産では裁判所が関与するため、時間や費用が多くかかる点に注意が必要です。
事業承継(M&Aを含む)
事業継承とは、法人を消滅させず、経営権を第三者に引き継ぐ方法です。従業員や取引先への影響を最小限に抑えられるのが大きなメリットです。
買い手が見つかれば、経営資源を次世代につなぎ、会社のブランドや従業員の雇用を守ることも可能になります。近年では中小企業でもM&Aを活用するケースが増えています。
休眠会社として存続
休眠とは、営業活動を停止しながら法人格を残す方法です。将来的な事業再開やM&Aの活用を見据えて選ばれることもあります。
ただし、解散の手続きを取らないため法人税の申告義務は継続します。負担は残りますが、「一時的に休む」という選択肢を取ることで柔軟な経営判断が可能です。
会社をたたむ手続きの流れ
会社をたたむ際には、法律に基づいた一定の手続きを経なければなりません。流れを理解していないと、手続きの漏れや遅延が発生し、余計な負担が生じる可能性もあります。
ここでは、一般的な会社の解散から清算完了までの流れを解説します。
1. 解散の決議
株主総会や社員総会で特別決議を行い、解散を正式に決めます。その後、法務局に解散登記を申請し、営業活動を終了したことを公的に示します。
2. 清算人の選任
解散後は「清算人」を選任します。通常は代表取締役が就任し、会社の財産整理や債務返済、税務処理を担います。
3. 債権者への公告
清算人は官報で公告を行い、債権者に異議申立ての機会を与えます。これにより、未払金や借入金などの整理が公平に行われます。
4. 財産の整理と債務返済
会社の資産を売却・換金し、借入金や税金などを優先的に返済します。債務をきちんと清算することで、後のトラブルを防げます。
5. 残余財産の分配と清算結了
債務返済後に残った財産を株主に分配し、清算結了登記を行います。これにより法人格が消滅し、会社のたたみ方が完了します。
会社をたたむ前に押さえておきたいポイント
会社をたたむ際には、流れを理解するだけでなく、費用や注意点も事前に把握しておくことが大切です。
まずは、「お金」「手続き」「専門家への相談」の3つのポイントを押さえておきましょう。
会社をたたむときにかかる費用
会社をたたむ際には、一定の費用が発生します。代表的なものは次のとおりです。
- 官報公告費用:約4万円(掲載文字数により変動)
- 登録免許税:解散登記・清算結了登記で41,000円
- 専門家報酬:司法書士・税理士・行政書士などへ一括依頼で20万円以上
会社の規模や状況によって増減はありますが、トータルで30万円程度〜が目安と考えておくと安心です。
とくに、清算に時間がかかる場合や裁判所が関与する手続きになると、追加で費用が発生するケースもあります。早めに見積もりを取り、資金計画に組み込んでおくとスムーズです。
手続きを進める際の注意点
解散・清算の手続きでは、登記以外にも多くの対応が求められます。とくに忘れやすいポイントは以下のとおりです。
- 税務署への「解散確定申告」および「清算確定申告」
- 借入金・リース契約・取引契約の解約手続き
- 社員がいる場合は、雇用契約終了に伴う退職手続きや社会保険の資格喪失届
これらを怠ると、後に追加の税金や未払い問題が発生する可能性があるため注意が必要です。
さらに、会社名義の銀行口座やクレジットカード、インターネット契約など細かな契約も解約が必要になります。見落としを防ぐためには、チェックリストを作成し、順序立てて処理するのがおすすめです。
税理士や司法書士へ相談することで手続きがスムーズに
会社をたたむ手続きは、法務局や税務署など複数の窓口が関わり、提出書類も多岐にわたります。もし書類に不備があればやり直しが必要になり、場合によってはペナルティを受けるリスクもあります。
そのため、税理士や司法書士といった専門家に依頼するのがおすすめです。解散・清算に伴う税務処理や登記手続きを任せられることで、経営者自身の負担を減らし、確実に手続きを完了させることができます。
専門家の視点から適切なアドバイスを受けられる点も大きなメリットで、無駄な時間やコストを削減できる可能性があります。結果的に、スムーズかつ安心して「会社をたたむ」という大きな節目を乗り越えることができるでしょう。
まとめ
会社をたたむという決断は、経営者にとって大きな節目であり、同時に複雑な手続きや専門知識が求められます。
解散の決議から清算結了までには、法務局や税務署など複数の窓口での手続きを行わなければならず、慣れていないと不備ややり直しで余計な時間と費用がかかってしまうこともあるでしょう。
また、官報公告や登録免許税といった公的費用に加え、税務や登記の処理を行う税理士・司法書士への依頼も欠かせません。
こうした手続きをバラバラに依頼すると調整の手間も増えてしまいますが、当事務所には税理士と司法書士が在籍しているため、一括で相談・対応が可能です。経営者の皆さまの負担を減らし、スムーズに会社を整理できるようサポートいたします。
監修者

石塚 友紀 / 代表税理士
ライストン税理士事務所 代表税理士の石塚友紀と申します。
当税理士事務所では、記帳代行や申告書作成をするだけではなく、お客様にあった節税プランを積極的に模索、ご提案しています。
お客様の不安やお悩みを解消し、顧問税理士として一つひとつのご依頼に正面から向き合い全力でご支援させていただきます。
税務のことでお悩みの方、顧問税理士をお探しの方は是非一度、ライストン税理士事務所へご相談ください。