役員報酬と給与の違いとは?仕組み・税金・見直しポイントを解説

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役員報酬と従業員の給与は、どちらも会社から支払われるものですが、仕組みも税務上の扱いも異なります。
特に役員報酬は、決め方を誤ると損金不算入や税務調査の対象になりやすく、慎重な運用が求められるでしょう。
今回は、役員報酬と給与の仕組みの違いと税務上のポイント、そして適切な役員報酬の設定についてわかりやすく解説していきます。
01.役員報酬と給与の基本的な違い

役員報酬と給与の違いを理解するうえで重要なのは、支給対象となる立場と適用される法律の違いです。
役員報酬は「会社経営の責任」に対する対価
役員報酬は、取締役・執行役など会社の意思決定に携わる立場へ支払われる報酬です。会社法第423条では、役員として「取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人」が定義されており、これらの者に対して支払われるものが役員報酬に該当します。
また、役員は労働者という扱いではないため、労働基準法や最低賃金法などの労働者保護制度は適用されません。残業代や有給休暇といった制度の対象外である点も、給与との大きな違いです。
つまり役員報酬は、働いた時間ではなく、会社経営を担う責任そのものに対して支払われるものと言えます。
給与は「労働の対価」
一方の給与は、従業員と締結した労働契約に基づいて支払われる対価です。労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法など、労働者を守る各種法律のもとで働く仕組みになっています。
労働時間や担当する業務、残業の有無によって報酬が上下する点も特徴で、役員報酬とは支給の考え方がまったく異なります。
02.役員報酬と給与の税務上の違い

税務上もっとも大きな違いは、役員報酬は原則として自由に増減できないのに対し、従業員給与は状況に応じて変更できる点にあります。
役員報酬は原則として定期同額
役員報酬は、事業年度開始後3ヶ月以内に金額を確定し、その後は原則として変更することができません。
役員には、毎月同じ金額を支給する「定期同額給与」であることが法人税法上の要件となっています。これは、会社の利益調整目的で役員報酬を増減させることを防ぐために設けられたものです。
また、税務上「不相当に高額な報酬」と判断されれば、損金として認められない可能性もあるので注意しましょう。
その他の支給方法
役員報酬には、定期同額給与以外にも損金計上が認められる方法があります。
【事前確定届出給与(役員賞与)】
あらかじめ支給日・金額を税務署に届け出た役員賞与。
届出がなければ損金不算入となり、法人税負担が増える。
このように、役員報酬は厳密にルール化されているため、運用を誤ると大きな税負担につながります。
給与は働いた分に応じて変動可能
従業員の給与は、残業代・深夜手当・インセンティブ・賞与など、業務量や評価に応じて変動することが認められています。
支給した給与は、基本的に全額を損金算入でき、法人税上の制限もありません。
03.役員報酬の正しい決め方

役員報酬は、税務だけでなく会社の資金繰りにも影響する重要な項目です。報酬金額の決定にあたっては、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
決算の着地を見ながら「期首3ヶ月以内」で決定
役員報酬の変更は、期首から3ヶ月以内に確定する必要があります。この期間を過ぎると、基本的には変更できません。
会社の利益の見込みを踏まえ、法人税の負担を適切にコントロールするためにも、期首前後のシミュレーションが不可欠です。
資金繰りと法人税のバランスを取る
役員報酬を高く設定しすぎると、会社に資金が残らず、運転資金が圧迫されます。逆に低すぎると法人税の負担が増えてしまうため、適正な水準を見極めることが重要です。
中長期的な経営計画を踏まえ、会社と役員双方にとって無理のない金額を設定するようにしましょう。
業績悪化での変更は慎重に
売上の急減などで役員報酬の減額が必要になるケースもありますが、期中の変更は税務上「定期同額性が崩れた」と判断されるリスクがあります。
どうしても変更が必要な場合は、「業績悪化によって支給継続が困難である」と客観的に説明できる資料が必要です。
不相当に高額にしない
役員報酬が「不相当に高額」と税務署が判断すると、損金算入が認められず、法人税の負担が増えることがあります。
同業他社や会社規模とのバランスを見ながら適正額を判断することが求められます。
まとめ

役員報酬と給与は、支給の仕組み・税務の扱い・決め方などが大きく異なります。特に役員報酬は、定期同額給与や事前確定届出給与など、厳格なルールのもとで運用しなければ損金算入できず、法人税負担が増えるかもしれません。
役員報酬の設定は、税務・経営・資金繰りなど多くの要素を踏まえて判断すべき重要な経営項目です。税理士と相談しながら進めることが、会社の安定経営にもつながります。
当事務所では、役員報酬の設定や変更のアドバイス、事前確定届出給与の手続きなど、幅広くサポートしています。役員報酬の決め方に不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
監修者
石塚 友紀 / 代表税理士
ライストン税理士事務所 代表税理士の石塚友紀と申します。
当税理士事務所では、記帳代行や申告書作成をするだけではなく、お客様にあった節税プランを積極的に模索、ご提案しています。
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