役員報酬と給与の違いとは?仕組み・税金・見直しポイントを解説

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役員報酬と従業員の給与は、どちらも会社から支払われるものですが、仕組みも税務上の扱いも異なります。
特に役員報酬は、決め方を誤ると損金不算入や税務調査の対象になりやすく、慎重な運用が求められるでしょう。
今回は、役員報酬と給与の仕組みの違いと税務上のポイント、そして適切な役員報酬の設定についてわかりやすく解説していきます。
01.役員報酬と給与の基本的な違い

役員報酬と給与の違いを理解するうえで重要なのは、支給対象となる立場と適用される法律の違いです。
役員報酬は「会社経営の責任」に対する対価
役員報酬は、取締役・監査役・会計参与など、会社経営や意思決定に関わる立場へ支払われる報酬です。会社形態によっては、執行役が含まれる場合もあります。
また、役員は労働者という扱いではないため、労働基準法や最低賃金法などの労働者保護制度は適用されません。残業代や有給休暇といった制度の対象外である点も、給与との大きな違いです。
つまり役員報酬は、働いた時間ではなく、会社経営を担う責任そのものに対して支払われるものと言えます。
従業員給与は「労働」に対する対価
一方の給与は、従業員と締結した労働契約に基づいて支払われる対価です。労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法など、労働者を守る各種法律のもとで働く仕組みになっています。
労働時間や担当する業務、残業の有無によって報酬が上下する点も特徴で、役員報酬とは支給の考え方がまったく異なります。
02.役員報酬と給与の税務上の違い

税務上もっとも大きな違いは、役員報酬は原則として自由に増減できないのに対し、従業員給与は状況に応じて変更できる点にあります。
役員報酬は原則として定期同額
役員報酬は、事業年度開始後3ヶ月以内に金額を確定し、その後は原則として変更することができません。
役員には、毎月同じ金額を支給する「定期同額給与」であることが法人税法上の要件となっています。これは、会社の利益調整目的で役員報酬を増減させることを防ぐために設けられたものです。
また、税務上「不相当に高額な報酬」と判断されれば、損金として認められない可能性もあるので注意しましょう。
その他の支給方法
役員報酬には、定期同額給与以外にも損金計上が認められる方法があります。
【事前確定届出給与(役員賞与)】
あらかじめ支給日・金額を税務署に届け出た役員賞与。
届出がなければ損金不算入となり、法人税負担が増える。
このように、役員報酬は厳密にルール化されているため、運用を誤ると大きな税負担につながります。
事前に届け出た内容(支給金額や支給時期等)と異なった支給をした場合、損金算入が認められなくなる非常に厳しい制度となるため、届出の際は顧問税理士と協議の上、慎重に決定することをおすすめします。
給与は働いた分に応じて変動可能
従業員の給与は、実際の労働時間や業績、評価などに応じて柔軟に変動できます。残業代・深夜手当・インセンティブ・賞与なども、こうした仕組みの一部です。
また、支給した給与は原則として全額損金算入できるため、役員報酬に比べて税務上の制約が少ないという特徴があります。
なお、役員の中には、ケースによっては従業員としての業務も担っている方もいます。このような使用人兼務役員は、一定の条件を満たせば、役員報酬に加えて給与が支給される場合があります。
ただし、代表取締役やCEOなど、一部の役職は使用人兼務役員に該当しません。
03.役員報酬の相場は?

役員報酬を決める際、一般的な相場が気になる方も多いでしょう。役員報酬には法律上の明確な上限・下限はありませんが、極端に高すぎたり低すぎたりすると、税務上のリスクや資金繰りへの影響が生じる可能性があります。
そのため、相場感を把握したうえで、自社に合った金額を設定することが重要です。
【役員報酬の相場】
| 株式会社の資本金 | 平均額 |
|---|---|
| 2,000万円未満 | 760万,2,000円 |
| 2,000万円以上 | 1,012万円 |
| 5,000万円以上 | 1,295万6,000円 |
| 1億円以上 | 1,508万1,000円 |
| 10億円以上 | 1,787万1,000円 |
参考:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査(令和7年9月公表)」をもとに作成
参考として、国税庁 が公表している「令和6年分 民間給与実態統計調査」では、資本金規模ごとの役員給与の傾向を確認できます。
このデータを見ると、会社の規模が大きくなるほど、役員報酬も高くなる傾向があります。
相場だけで決めるのは危険
役員報酬を決めるうえで、相場はあくまで参考の一つです。実際には、同じ資本金規模の会社でも、業種や売上、利益、資金繰りによって適正額は大きく異なります。
そのため、役員報酬を設定する際は、以下のようなポイントを総合的に判断することが大切です。
【役員報酬を設定するポイント】
- 同業他社と比較して高すぎないか
- 会社の利益に見合っているか
- 無理なく継続して支払える金額か
役員報酬は、一度決定すると原則として事業年度中に自由に変更できません。節税だけを目的に決めるのではなく、税金・利益・資金繰りのバランスを踏まえて慎重に設定しましょう。
04.役員報酬の正しい決め方

役員報酬を適切に設定するには、税務ルールだけでなく、会社の利益や将来の資金計画も踏まえる必要があります。ここでは、役員報酬を決める際に押さえておきたい基本ポイントを解説します。
期首から3ヶ月以内に決定する
役員報酬の変更は、期首から3ヶ月以内に確定する必要があります。これは、役員報酬を損金算入できる定期同額給与のルールに関係しており、毎月同額で継続的に支給することが前提です。
この期間を過ぎてから金額を変更すると、変更後の報酬の一部または全部が損金として認められない可能性があります。
そのため、新しい事業年度が始まる前後で、早めに役員報酬の金額を検討しておくことが大切です。
会社の利益予測をもとに金額を決める
役員報酬を決める際は、会社の利益予測をもとに検討しましょう。
報酬額が高すぎると会社の利益が圧迫され、資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。反対に、低すぎると法人税の負担が増えるケースもあります。
そのため、売上見込みや経費、利益予測を踏まえながら、会社と役員の双方にとってバランスのよい金額を設定することが重要です。
節税だけを目的に決めるのではなく、中長期的な経営計画も考慮して判断しましょう。
勘定科目・支給ルールを整理する
役員報酬を設定する際は、勘定科目や支給ルールも明確にしておく必要があります。
たとえば、役員報酬・役員賞与・使用人給与では、税務上の扱いが異なります。どの名目で、いつ、いくら支給するのかを事前に整理しておくことが重要です。
後から処理に迷わないためにも、会計処理や支給ルールはあらかじめ統一しておきましょう。
05.役員報酬を決める際の注意点

役員報酬は、一度設定すると税務や資金繰りに大きな影響を与えます。思わぬリスクを避けるためにも、事前に注意点を確認しておきましょう。
不相当に高額な設定に注意
役員報酬が不相当に高額だと判断された場合、損金算入が認められない可能性があります。
税務署は、役員の職務内容や会社の規模、利益水準、同業他社の報酬水準などを総合的に見て判断します。極端に高額な役員報酬は、利益調整や節税目的とみなされることもあるため注意が必要です。
役員報酬を設定する際は、相場や同業他社の水準も参考にしながら、合理的に説明できる金額にしましょう。
期中変更は慎重に行う
役員報酬は、一度決めると原則として事業年度中に自由に変更できません。期中で金額を変更すると、定期同額給与の要件を満たさなくなり、損金算入に影響が出る可能性があります。
ただし、業績の急激な悪化など、やむを得ない事情がある場合は例外的に変更が認められるケースもあります。
その際は、議事録や業績資料など、変更理由を客観的に説明できる資料を残しておくことが重要です。
資金繰りを圧迫しない金額にする
役員報酬は、会社が継続して支払える金額で設定することが大切です。
報酬額が高すぎると、会社に十分な運転資金を残せず、資金繰りが厳しくなる可能性があります。とくに、売上変動が大きい業種や設立間もない会社では、余裕を持った資金計画が重要です。
短期的な節税効果だけで判断せず、将来の資金需要も見据えながら、無理のない水準を設定しましょう。
06.役員報酬に関するよくある質問

役員報酬については、金額設定や支給方法に関する疑問を持つ方も多いでしょう。ここでは、よくある質問をわかりやすく解説します。
ただし、役員個人の生活費を確保しにくくなるほか、社会保険料や所得税にも影響が出る可能性があります。会社と個人のバランスを考えながら慎重に判断しましょう。
会社の利益や資金繰り、税負担に加え、同業他社の相場も参考にしながら総合的に判断することが大切です。無理なく継続して支払える金額を設定しましょう。
ただし、役員でありながら従業員としての職務も担う使用人兼務役員の場合は、役員報酬とは別に使用人給与が支給されるケースもあります。
まとめ

役員報酬と給与は、支給の仕組みや税務上の扱い、金額の決め方などが大きく異なります。とくに役員報酬は、定期同額給与や事前確定届出給与といったルールがあり、正しく運用しなければ損金算入が認められず、法人税負担が増える可能性があります。
役員報酬の設定は、税務・経営・資金繰りなど多くの要素を踏まえて判断すべき重要な経営項目です。税理士と相談しながら進めることが、会社の安定経営にもつながります。
当事務所では、役員報酬の設定や変更のアドバイス、事前確定届出給与の手続きなど、幅広くサポートしています。役員報酬の決め方に不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
監修者
石塚 友紀 / 代表税理士
ライストン税理士事務所 代表税理士の石塚友紀と申します。
当税理士事務所では、記帳代行や申告書作成をするだけではなく、お客様にあった節税プランを積極的に模索、ご提案しています。
お客様の不安やお悩みを解消し、顧問税理士として一つひとつのご依頼に正面から向き合い全力でご支援させていただきます。
税務のことでお悩みの方、顧問税理士をお探しの方は是非一度、ライストン税理士事務所へご相談ください。





