確定申告をしないとどうなる?無申告の罰則・ペナルティと正しい対処法

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「確定申告をしないとどうなるのか?」これは個人事業主や副業を行う方にとって、常に頭をよぎる不安のひとつです。税務署から通知が来ないからといって放置していると、実は大きなリスクを抱えてしまいます。
無申告のままでは「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティが課され、納付すべき金額がどんどん膨れ上がる可能性があるのです。さらに悪質だと判断されれば、更に追加で40%の罰則や財産の差押え、場合によっては刑事告発といった強制的な措置に至るケースもあります。
一方で、期限を過ぎてしまったとしても「期限後申告」という形で自主的に対応すれば、課される罰則は軽減される場合もあります。大切なのは「気づいた段階で行動すること」です。
本記事では、「確定申告しないとどうなるのか」をテーマに、無申告のリスクとペナルティの種類、さらに正しい対処法までを網羅的に解説します。不安を抱えている方はぜひ参考にしてください。
確定申告とは?なぜ必要なのか
確定申告は税金を納めるための義務であると同時に、払い過ぎた税金を取り戻したり、控除を活用して節税につなげたりできる大切な仕組みです。
確定申告の基本的な仕組み
確定申告とは、1年間の所得と経費を計算し、その結果に基づいて納めるべき税額を国に報告する制度です。例えば、サラリーマンであっても副業をしている場合や、個人事業主・フリーランスの方は、原則として確定申告が必要になります。
確定申告をすることで、払い過ぎていた税金が還付されるケースもあります。例えば源泉徴収で多めに天引きされていた場合、正しく申告することで還付金が戻ってくるのです。
また、確定申告は個人の納税義務を果たすだけでなく、税の公平性を保つ重要な仕組みでもあります。納められた税金は社会保障や公共サービスの財源となり、社会全体の基盤を支えています。
つまり、確定申告は単なる「義務」ではなく、社会を維持するうえで欠かせない役割を担っているのです。
誰が確定申告をしなければならないのか
確定申告の対象は、個人事業主や会社経営者に限りません。給与所得者であっても、次のような場合には確定申告が必要になります。
【確定申告が必要なケース】
- 副業収入が年間20万円を超える場合
- 不動産所得や株式の売却益がある場合
- 医療費控除や住宅ローン控除を受けたい場合
- 年末調整で処理できない所得や控除がある場合
とくに副業をしている会社員は、「会社にバレたら困る」と考えて申告を避ける人もいますが、住民税や支払調書などから簡単に把握されてしまいます。
後述するように、税務署はマイナンバーや取引データを通じて収入を把握できる仕組みを持っているため、「申告しなければ分からない」という考えは通用しないのです。
確定申告をするメリット
確定申告は「税金を納める義務」という側面だけではありません。正しく行うことで、次のようなメリットを得ることができます。
払い過ぎた税金が戻る
源泉徴収や予定納税で多く納めすぎていた場合、確定申告をすることで還付金として戻ってきます。医療費控除やふるさと納税の寄附金控除、住宅ローン控除なども申告によって適用される代表例です。
節税につながる
青色申告をすれば最大65万円の控除が受けられるほか、赤字を翌年以降に繰り越せる損失繰越控除も利用可能です。
融資やローンで有利になる
金融機関から事業資金の融資を受ける際や、住宅ローンの審査では、確定申告書が「収入を証明する書類」として必要です。きちんと申告していれば、信用力が高まり、資金調達がスムーズになります。
確定申告をしないとどうなる?無申告の5大リスク
確定申告を行わない状態を「無申告」と呼びます。では、無申告を続けてしまうと具体的にどのようなリスクが生じるのでしょうか。ここでは代表的な5つの影響を見ていきます。
1. 無申告加算税や延滞税などのペナルティ
確定申告をしなかった場合、まず課されるのが「無申告加算税」と「延滞税」です。これらは本来納めるべき税額に上乗せされるペナルティであり、遅れれば遅れるほど金額は膨らみます。
例えば、納めるべき税金が50万円だったケースを考えてみましょう。
【無申告加算税・延滞税のシミュレーション例(税額50万円の場合)】
申告のタイミング 無申告加算税率 加算税額 延滞税
自主的に期限後申告
(通知前)5% 25,000円 少額(遅れ日数による)
税務署から指摘後に申告 15% 75,000円 数千円〜数万円
※出典:財務省「加算税の概要」より
このように、自主的に期限後申告を行えば加算税は5%で済みますが、税務署から指摘を受けてから申告した場合は15%となり、最終的な負担が数万円以上増えることになります。
さらに、納付が遅れた日数に応じて延滞税も加算されるため、結果として10万円以上余分に支払うケースも珍しくありません。また、意図的に所得を隠したり長期間無申告を続けたりする「悪質なケース」と判断されると、通常よりもはるかに重いペナルティ(重加算税)が課されることもあります。
だからこそ「気づいた時点で申告・納付する」ことが、最も有効なリスク回避策となります。
2. 青色申告特典が取り消される
青色申告とは、個人事業主やフリーランスが利用できる特別な申告制度です。正しい帳簿付けや期限内申告を行うことで「青色申告特別控除(最大65万円)」をはじめ、赤字の繰越や家族への専従者給与などの優遇が受けられます。
しかし、無申告や期限後申告を繰り返すと承認が取り消され、白色申告しか認められなくなります。白色申告は控除がなく、節税効果は大きく低下するでしょう。
例えば年間300万円の所得なら、青色申告であれば65万円の控除が受けられ課税所得は235万円ですが、白色ではそのまま300万円に。税率によっては数十万円単位の差になる可能性があります。
3. 金融機関からの信用低下につながる
無申告を続けていると、税務署だけでなく金融機関にも影響が及びます。融資やローン審査では、直近の確定申告書や納税証明書の提出を求められることが多く、申告していないと収入を証明できない状態になります。
例えば、事業資金を調達したいフリーランスが銀行に融資を申し込むとき、過去3年分の確定申告書を求められるのが一般的です。しかし無申告であれば「収入実績が不明」と判断され、審査に通らない可能性が高まり、せっかくの成長機会を逃してしまうかもしれません。
また、会社員であっても住宅ローンや教育ローンを利用する場面で同様のリスクがあります。副業収入を正しく申告していなければ、返済能力の裏付けが弱くなり、希望額を借りられないケースもあります。
このように、無申告は税務署からの処分にとどまらず、将来のライフプランや事業展開の足かせとなるのです。
4. 税務調査や差押えといった強制措置
無申告を長期間放置していると、税務署から税務調査を受ける可能性が高まります。調査の流れは概ね次のようになります。
- 事前通知:税務署から電話や書面で調査の通知が届く
- 資料提出:帳簿、通帳、請求書などの提出を求められる
- ヒアリング:調査官が事業の状況を確認し、不明点を直接質問する
- 是正処理:申告漏れがあれば修正申告や追徴課税が求められる
この過程で虚偽や申告漏れが発覚すれば、追徴課税が課されるだけでなく、故意に租税を回避していたと判断されれば重加算税の賦課に発展することもあります。
税務署は支払調書やマイナンバー制度、さらには取引先への調査などを通じて高い精度で情報を収集しており、「隠していれば分からない」という考えは非常に危険です。実際、取引先への調査をきっかけに無申告が発覚するケースも少なくありません。
確定した納税額や加算税が支払えない場合は、差押えなどの強制措置が取られることもあります。
> 無申告でも税務調査は来る?知らないと損するリスクと対策を徹底解説
5. 刑事告発や脱税扱いのリスク
さらに悪質で税額が過大な場合、無申告は「脱税」とみなされ、刑事告発に発展することもあります。特に、意図的に収入を隠したり、複数年にわたり無申告を続けたりした場合は、重い罰則が科される可能性があります。
もちろん、すべてのケースで告発されるわけではありません。多くは税務調査や加算税による是正で済みますが、悪質かつ申告をしていなかった税額が過大であれば、刑事告訴され懲役刑や罰金刑に至るリスクもあるのです。「最悪の事態に至る可能性がある」という認識を持っておくことが、リスク回避の第一歩といえるでしょう。
確定申告に関するよくある勘違い
「赤字だから必要ない」「副業が少額だから大丈夫」など、確定申告には誤解がつきものです。正しい知識を押さえて、自分の状況に照らし合わせて確認しましょう。
Q. 赤字なら申告しなくていい?
「赤字なら納める税金がないのだから、わざわざ申告する必要はない」と考える方が少なくありません。実際、税金の支払いが発生しないなら面倒な手続きは避けたいと思うのも自然です。
しかし、これは大きな誤解です。
赤字を申告しておくことで「損失の繰越控除」という制度を利用できます。例えば、ある年に事業で30万円の赤字が出たとします。その赤字を申告していれば、翌年に50万円の黒字が出たときに差し引いて20万円だけに課税できます。
この繰越控除は、青色申告なら3年間にわたって赤字を繰り越せる仕組みです。長期的に事業を続ける人ほど、赤字の年にしっかり申告しておくことが節税効果につながります。
つまり「赤字だから関係ない」ではなく「赤字だからこそ申告しておく」ことが、将来の税金を減らすための戦略になるのです。
Q. 副業が20万円以下なら申告不要って本当?
SNSや口コミなどでよく耳にする「副業が20万円以下なら申告不要」という言葉。
これを「副業の収入が20万円以下なら税金の申告はいらない」と受け取ってしまう人が多く、無申告につながるケースが少なくありません。
実際には、このルールには明確な条件があります。対象となるのは給与所得者(会社員など)で、しかも「副業による所得」が20万円以下の場合のみです。ここでいう「所得」とは、単純な収入額ではなく 収入から必要経費を差し引いた金額 を指します。
例えば、副業収入が30万円でも経費が15万円かかっていれば所得は15万円。この場合は「20万円以下」に該当し、所得税の確定申告は不要です。逆に、収入が18万円でも経費がゼロなら所得は18万円となり、やはり申告不要の対象になります。
ただし注意したいのは、この特例は所得税に限った話であること。住民税については金額にかかわらず申告が必要になる場合があり、申告を怠ると住民税の通知を通じて副業が会社に知られてしまう可能性があります。
Q. フリーランスや個人事業主の場合は?
フリーランスや個人事業主には「20万円以下だから申告不要」という特例はありません。事業所得は金額にかかわらず確定申告の対象となり、たとえ年間の売上が10万円や15万円でも原則として申告が必要です。
確かに、所得控除の範囲内であれば結果的に税額がゼロになることもあります。しかし、申告そのものを怠れば住民税や国民健康保険の算定に影響し、扶養の判定にも不整合が生じかねません。
つまり、少額であってもきちんと申告しておくことが、将来的なリスクを避けるために欠かせないのです。
Q. 年末調整をしたから確定申告は不要?
会社員の場合、「毎年年末調整をしているから、確定申告は自分には関係ない」と考える人が多いです。確かに給与所得だけであれば年末調整で納税が完結しますが、これはあくまで一部のケースにすぎません。
次のようなケースでは、年末調整後でも確定申告が必要になります。
- 医療費が年間10万円を超え、医療費控除を受ける場合
- 住宅ローン控除を初めて適用する場合
- 副業や投資で所得がある場合
- ふるさと納税のワンストップ特例を申請し忘れた場合
- 生命保険料控除や扶養控除など、年末調整に反映されなかった控除がある場合
- 株式や投資信託の配当・譲渡益を総合課税で申告する場合
- 年末調整されなかった給与や副業収入を合算し、所得が20万円を超える場合
このように、年末調整は「給与の税金を会社が精算する仕組み」であって、生活全体の税務をすべてカバーしているわけではありません。控除や副収入がある場合は、自分で確定申告を行う必要があるのです。
無申告が発覚するきっかけ
「申告していなければ分からないだろう」と考える人もいますが、実際には税務署はさまざまな方法で収入を把握しています。
> 無申告はなぜバレる?バレた後のリスクと今すぐ取るべき対処法を解説
マイナンバー制度と支払調書
現在は、給与や報酬の支払いを行った会社や団体が「支払調書」や「源泉徴収票」を税務署に提出する際に、マイナンバーを記載する仕組みになっています。個人に交付される書類にはマイナンバーは載っていませんが、税務署にはしっかりと報告されています。
そのため、副業やフリーランス収入を「こっそり申告しないでおこう」と考えても、支払先の会社が調書を提出していれば税務署には筒抜けです。
近年はマイナンバーの活用が進んでいるため、無申告のまま放置しても必ず把握されると考えておいた方がよいでしょう。
取引先への税務調査による取引実態の把握
税務署は個人だけでなく、取引先や支払先の企業にも調査を行います。その際に「支払記録はあるのに、受け取った側に申告がない」といった矛盾が見つかれば、無申告の可能性が浮上します。
また、調査で得られるのは企業の情報だけではなく、取引相手に関する収支データまで含まれます。こうした情報は全国の税務署で共有されるため、地方での小さな取引や少額の報酬であっても見落とされにくいのです。
結果として、本人が直接調査を受けていなくても、取引先への調査をきっかけに無申告が明らかになるケースは珍しくありません。
必要に応じて確認される金融取引の履歴
銀行口座の入出金、クレジットカードの利用明細、さらには仮想通貨や証券会社での取引履歴なども、必要に応じて税務調査の対象になり得ます。これらの情報は税務署が常時すべてを監視しているわけではありませんが、調査が始まれば詳細にチェックされます。
例えば、銀行口座に定期的に高額な入金があるのに申告がなければ、その矛盾はすぐに明らかになります。
とくに副業やネットビジネスの収入は現金で受け取るケースが少ないため、金融取引の履歴から無申告が発覚しやすいのです。
確定申告をしていないことに気づいたら
「申告を忘れていた」「数年分まとめてしていなかった」そんなときも、放置するより早めに行動することが大切です。
無申告が発覚する前に自主的に対応すれば、ペナルティが軽減される可能性があります。
期限後申告の方法
確定申告の期限(通常は翌年3月15日)を過ぎても、自主的に申告することは可能です。これを「期限後申告」と呼びます。
もちろん加算税や延滞税はかかりますが、税務署からの指摘を受ける前に自ら提出すれば、無申告加算税が軽減されるのです。
例えば、期限後すぐに自主的に申告すれば加算税は5%で済む場合がありますが、税務署に指摘されてからだと15%〜30%になることもあります。少しでも早く動くことが、自分を守る第一歩です。
過去の無申告をまとめて申告する場合
もし数年にわたって無申告のままになっている場合でも、まとめて申告することは可能です。ただし、その際には帳簿や領収書、通帳のコピーなどを揃えて、収入や経費を正しく整理する必要があります。
長年放置して税務署の調査で発覚すれば「重加算税」が課される可能性があり、負担はさらに大きくなります。気づいた段階で速やかに自主的に申告すれば「隠蔽」の疑いは低くなり、処分が軽く済む可能性が高まります。
複数年分を一度に処理するとなると、帳簿整理や計算が複雑で自力では難しいことも多いでしょう。そうした場合は、早めに税理士に相談するのがおすすめです。
無申告を避けるためにできること
日々の帳簿管理やツールの活用、専門家への相談など、少しの工夫で無申告は防げます。事前の準備が安心につながる予防策を紹介します。
帳簿管理・経費整理を早めに行う
無申告を防ぐために最も大切なのは、日々の収入や支出をこまめに記録しておく習慣です。日常的に帳簿をつけていれば、確定申告の時期にまとめて作業をする必要がなくなり、期限前に慌てる心配も減ります。
また、領収書や請求書を月ごとに整理しておけば、経費として計上できる項目を見落とすリスクも軽減できます。経費を正しく計上することは節税につながるだけでなく、万が一税務署から照会を受けた際にも根拠資料として役立ちます。
普段からのこまめな管理が、申告漏れや無申告を防ぐ最もシンプルで確実な方法といえるでしょう。
会計ソフトやクラウドサービスの活用
最近では、個人事業主や副業をしている会社員向けに、便利な会計ソフトやクラウドサービスが数多く提供されています。銀行口座やクレジットカードと連携すれば、入出金データを自動で取り込み、仕訳を自動処理してくれるため、記帳の手間を大幅に減らすことが可能です。
さらに、確定申告書の作成も自動で行える機能が備わっているものもあるため、税務の知識が少ない人でも比較的簡単に提出準備が整います。紙の帳簿やエクセル管理に比べて効率が格段に向上し、記録の抜けや重複といったミスも防げるのが大きなメリットです。
ITツールを取り入れることで、無申告のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
税理士に相談するメリット
「忙しくて帳簿整理が追いつかない」「税金の知識に自信がない」という場合は、税理士に相談するのが安心です。専門家に任せることで、法律に基づいた正確な申告ができるだけでなく、自分では気づきにくい節税のポイントをアドバイスしてもらえることもあります。
また、税務署からの問い合わせや税務調査が入った場合でも、税理士が代理で対応してくれるため心理的な負担が軽減されます。
とくに複数年分をまとめて申告するケースや、経費の整理が複雑になっている場合には、自力で対応するよりもスムーズに問題を解決できるでしょう。結果的に余計な追徴課税を防ぎ、安心して事業や副業に専念できる環境を整えることにつながります。
まとめ
確定申告をしないまま放置してしまうと、無申告加算税や延滞税といったペナルティのほか、青色申告特典の喪失、信用低下、さらには税務調査や差押えなど深刻なリスクにつながります。悪質と判断されれば、刑事告発や脱税扱いとなる可能性も否定できません。
一方で、期限を過ぎていても自主的に「期限後申告」を行えば、処分が軽減される場合があります。大切なのは「気づいた時点で早めに動くこと」です。過去の分をまとめて申告することも可能なので、不安を感じたらできるだけ早く対応しましょう。
また、日々の帳簿管理や会計ソフトの活用、そして税理士への相談といった工夫を取り入れることで、無申告を未然に防ぎ、安心して申告を終えることができます。
無申告でお困りの方や、正しい対応に迷っている方は、ぜひ専門家に相談してみてください。当事務所では初回相談を無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
監修者

石塚 友紀 / 代表税理士
ライストン税理士事務所 代表税理士の石塚友紀と申します。
当税理士事務所では、記帳代行や申告書作成をするだけではなく、お客様にあった節税プランを積極的に模索、ご提案しています。
お客様の不安やお悩みを解消し、顧問税理士として一つひとつのご依頼に正面から向き合い全力でご支援させていただきます。
税務のことでお悩みの方、顧問税理士をお探しの方は是非一度、ライストン税理士事務所へご相談ください。